AI時代、鍼灸は生き残れる?


昨年あたりから「AI時代になくなる仕事・業種」の話題をよく見かけるようになりました。

これまで安定とされていた仕事も、なくなる仕事カテゴリーに入っていたり、手に職系のものでも今後はなくなっていくだろうという話。

弁護士など資格取得が難しかった職業でさえ、消えていく仕事に入ってるんですよね。


「AIができない仕事しか生き残れない」

こういう話は今やあちこちで言われてるし、現実味も帯びてきています。


そんな中で、鍼灸は生き残れる仕事として語られることが多いのですが、どうなんでしょうね?


生き残れるとされる根拠が「人の手の感覚が必要とされるから」なんですが、

「物理刺激としての鍼灸」なら、あっさりとAIに置き換えられそうな気がします。

教科書通りのツボの位置=ここから何センチとかの数字で決めた位置に、何ミリ刺すとかの数字で決めた刺し方、そういう物理刺激ならきっとAIの方が適確です。


この症状にはこのツボを使う・ツボの位置はここから3㎝・深さは10㎜。

そんな定型どおりの鍼なら、AIができます。

そして残念ながらこういった定型どおりの鍼をしている鍼灸師も少なからずいる。


また、舌を診たり(舌診)脈を診たり(脈診)腹部を診たり(腹診)なども、データがとれないわけではないから、AIで可能かもしれない。


手の温度や触れる感覚なんてのも、ヒーターや人工皮膚などの素材によって作れそう。

スムーズな会話もできるようになるだろうし、ロボットは冷たい・無機質なんてイメージも薄れていく可能性だってある。

手書き文字の方が温かいとか言う人でも、読めないほど汚い文字ならデジタル文字の方がいいと思うように、下手に触れられるならAIの方がいいと思うようになるかもしれない。


だから、鍼灸はAI時代でも安泰、なんて思えない。

定型どおりとか、対症療法的な鍼灸は生き残れないんじゃないか。そう思います。

……とはいえ、鍼灸ロボットに多大なコストをかけるとは思えないので、そういう点では大丈夫かなとも思います。

現代医療(病院などでの医療)ほど鍼灸は重要視されてませんから、鍼灸のための研究開発なんてやらないでしょう。

コストの面から大丈夫かなとは思うけれど、物理刺激的な鍼灸に生き残れる強みが十分にあるとは思えません。


東洋医学に基づいた鍼灸しか生き残れないんじゃないかと、私は思っています。

つまり、単なる物理刺激ではない鍼灸。

物理刺激でないとかいわれても、はぁ?ですよね。

「ツボに鍼を刺すもの」というのが一般的な認識ですよね。

肩こりにはこのツボ、腰痛にはこのツボというのがあって、そこに鍼を刺してコリや痛みを取る。

これ ↑ が鍼灸だと思ってますよね。

これ ↑ は鍼灸のごくごく一部です。一部というか、むしろ末端。


東洋医学に基づいた鍼灸には、

「この症状にはこのツボ」という処方はありません。

同じ症状でも原因が違えば、処方が違ってくるんです。

肩こりひとつとっても原因はさまざまで、

たとえば一番大きな原因が「冷え」なら、三陰交という足にあるツボを使って冷えをとるだけで寛解する。肩に鍼をしなくても良くなることがあります。

ツボも位置が決まってるわけじゃありません。人によって違い、同じ人でも日によって違い、左右でも違う。深さもさまざま。鍼を刺しておく時間(刺してすぐに抜くとか、5分間刺したままにするとか)も決まっていません。

また「冷え」からくる肩こりなら、その「冷え」の元になっているものはなにか。

生活習慣や、悩み事や心配事などの精神的なもの、その人の背景や生まれつきの体質など、さまざまな要素も考慮に入れる。

これ ↑ が東洋医学に基づいた鍼灸、です。

これ ↑ はいろんな要素の重なり合い、組み合わさりがあるので、単純な図式化が難しいです。

施術中にも体の状態は常に変化しているので、その時々の変化に応じる必要もあります。

こんなめんどくさいこと、AIはやらないですよね。(知らんけど)

めんどくさいから、やらない鍼灸師もいます。(知らんけど)


で、私はめんどくさがりだけど、やっています。

なぜやっているかというと、

良き指導者に巡り会えたから。

そして、やっていると奥深さや面白さがどんどんわかってくるから。


面倒なことほどやると楽しいのだと、なにかで読んだことがあります。

これからは、面倒なことをやれないと生き残れない。のかも。


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鍼 時々 お灸

今出鍼灸院は 大阪・京橋にある完全予約制の鍼灸院です。 商店街の中にあるけれど、看板もなく入り口もわかりにくいマンションの一室で、 ひっそりと(?)やっています。 気まぐれにブログ書いてます。 鍼灸や東洋医学のこと、健康ネタなどを書こうとしつつ ほぼ雑記です。

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